「真夜中にすまない。」
「かまわない。」


ジェロニモさんは話を聞いても(人柄もあるのでしょう)笑ったりも、からかいもしませんでした。
ただ静かに話を受け止めてくれます。
そして、ジェロニモさんはただ無口で無表情というわけではありませんでした。
声をかければ無視せずちゃんと応答してくれますし、トイレの行きと帰り、時々身をすくませるジョーさんを元気付けるように優しく背中を叩いてくれます。
よく見れば安心させるように優しく、穏やかな顔をしていることも分かります。
ジェロニモさんとの距離が縮まり、また、ジェロニモさんという人を知ることが出来て心が温かくなったジョーさんでした。


部屋に入ろうとした時、ジェロニモさんはジョーさんを呼び止めました。
「怖がるのは当然だ。恥ずかしがることはない。」
ジョーさんはにっこりと笑いました。
「ありがとう。」
心からそう思いました。











それから時々うっかり、ということになってもジェロニモさんに頼むことが出来ました。
しかし、そう簡単に問題が終わりませんでした。
ジェロニモさんは何時までも日本にいるわけではなかったのです。ジェロニモさんはギルモア邸を去ってしまいました。


ジョーさんはいつも以上に気を付けるように心掛けました。
しかし―。


「僕って本当に馬鹿だ…。」
泣きたい気持ちを抑え、ジョーさんは呟きました。
よりにもよってこんな日にトイレに行きたくなるとは!


平和な毎日なので、当然皆は各々の生活についてました。
さらに、今日に限ってフランソワーズさんが一泊二日の旅行に出ていたのです。
ギルモア低にいるのは、博士と「夜」の時間にいるイワン君、そして調整のために来たジェットさんでした。


調整が終わったとたん、疲れて眠ってしまった博士には頼めません。
ジェットさん以外、誰もいませんでした。


002に頼んだらたちまち皆に伝わってしまう…ジョーさんは必死に考えました。
確かに秘密を知られるのは恥ずかしいことです。しかし、このまま漏らしたり、膀胱炎になる方がもっと恥ずかしいと思い、ジョーさんは決意を固めました。


「002、起きて…」
「?なんだ、009。敵襲か?」
「ううん。実は…。」
ジョーさんは素直に話しました。
「だから…一緒に来てくれない…かな?」
ジョーさんはジェットさんの返事をどぎまぎしながら待ちました。


「…いいぜ。」
ジェットさんの声は静かでした。











ジェットさんが余りにもあっさりと引き受け、さらに何も言わずに一緒に歩いてくれることにジョーさんは驚きを隠せませんでした。
思わずまじまじと見ていたのでジェットさんはジョーさんの顔に視線を落としました。
「意外だって顔してんな。」
「うん…。絶対からかわれると思ってた。」
ジョーさんの馬鹿正直な答えに苦笑しながらもジェットさんは話してくれました。


「昔…まだサイボーグじゃなかった頃、身寄りの無いもの同士で暮らしていたんだ。
その中で弟のような奴がいたんだが、そいつも一人でトイレにいけなくてさ、よく付き合ってやったよ。
『一緒に来て欲しい』って頼んだお前の顔があの時のあいつにそっくりだったぜ。
…もっとも、今頃そいつはいい年したオヤジだろうがな。」


ジェットさんはジョーさんに視線を合わせていましたが、その目はどこか遠くを見ていました。
ジョーさんはどう返せばいいかわからず困惑していたら、ジェットさんはふっと笑いました。
「そんな顔もあいつそっくりだよ。」
そう言って手を繋いでくれました。


ジョーさんの部屋についたとき、ジェットさんは思いついたように声をかけました。
「そうそう。言っとくが、そいつが9歳ぐらいの話だぜ。
やっぱ、幽霊怖がんのはそろそろ卒業しろよ。
見えないものが怖いってのを理解できないわけじゃねーけどさ。」


ジョーさんは、ハインリヒさんばかりかジェットさんにも説教されてすねてしまいました。
特にジェットさんは同い年です。確かに自分が子供っぽい所為なのはわかりますが、だからといってあっさりと納得出来ない何かがありました。
すっかりジョーさんはふくれて、むすっとした顔でドアを閉めながら返しました。





「見えてたって怖いもん。」





パタン。




ジョーさんの部屋のドアは閉ざされていても、しばらくジェットさんはそこを動けませんでした。











それから二度と、ジェットさんはジョーさんのトイレに付き合いませんでした。






fin.


サイボーグ009では初めての小説です。 長い一本の小説、というよりは短いいくつもの話がつながった感じですね。
平ゼロベース、だとは思うのですが、なんだか設定が入り混じってます。 変な部分が多いし。つーかそもそもサイボーグってトイレ行くのかよ?とか思う自分がいるのですが耳を傾けないように頑張ってみました。
やたらと長い題名ですが、この話はもともと さんが009の自己紹介で書かれていた言葉です。(使用の許可は得ています。) その文章を読んで私なりに「○○○」を当てはめ、出来た小説だったりします。

その渉さんのサイト、アストロはこちら
アルベルトさんが出張り気味の小説中心サイト様。フランソワーズさんとアルベルトさんのコンビがいい感じです。 3Dのアルベルトさんが某ゲームの女性(女神?)になってる!笑いが止まりません。 などなど見所いっぱいなのです〜!是非是非ご覧あれ〜。
アストロ




Back to works top page



No reproduction or republication without written permission.
2003.3.6  © end-u 愛羅武勇

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送